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201X年10月某日
先月までの残暑は何処へ行ったのか、過ごし易くなってきた矢先に突然の豪雨。
「まいったな…」
雨をしのぐため路地裏の潰れた飲食店の軒先まで走り、一息ついた所でそう呟く。
どことなく憂鬱そうに立ち、どんよりとした空を見つめる。
そんな彼の外見は普通に何処にでもいそうな標準体型。
格好いいともダサいとも言えない無難な服装、顔も九割九分の人は普通と答えるような全身普通の青年。
そんな彼が憂鬱そうに見えるのは親しい友人に誘いを断られ、さらには今一番聞きたくない言葉を聞かされたからだ。
『誘っくれたのにスマン、今就活の準備で忙しいんだ。また今度落ち着いた時にでも遊ぼうぜ。』
彼が今一番聞きたくない言葉は、断り文句ではなく“就活”の二文字。
自分の今後の人生を左右するであろう、もっとも大事な事だ。
自業自得ではあるが、未だに情報集めや準備すらしていない。
彼はそんな自分の状態が、友人から取り残されてしまったのではという感じがして仕方がない。
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