7人が本棚に入れています
本棚に追加
降りしきる豪雨と時折響く雷鳴をよそに、彼は彼自身の憂鬱の種について考えていた。
(就活か…意識していなかった訳じゃないが、直面すると億劫なもんだな)
何かに興味がある訳でも無く、突出した得意な事がある訳でも無い。
ただただ普通過ぎる自分に合った職が分からないだけ。
(たぶん必死になって就活すれば、ギリギリ何とか職にありつけるかも知れないが…)
どうしても自分を奮い立たせる事ができない。
「まいったな…」
彼の口癖なのかもしれないその台詞を口にした時、ふと目の前の雨の中に人影が見えた。
傘を差さずにスタスタと軽やかにこちらの方向に歩いてくる。
当然ながら雨でずぶ濡れになっているはずなのだが、そうは見えないほど軽やかだった。
その影が近づいてくると、何か言っているようで、少しずつ聞こえるようになってきた。
最初のコメントを投稿しよう!