始まりは雨

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降りしきる豪雨と時折響く雷鳴をよそに、彼は彼自身の憂鬱の種について考えていた。 (就活か…意識していなかった訳じゃないが、直面すると億劫なもんだな) 何かに興味がある訳でも無く、突出した得意な事がある訳でも無い。 ただただ普通過ぎる自分に合った職が分からないだけ。 (たぶん必死になって就活すれば、ギリギリ何とか職にありつけるかも知れないが…) どうしても自分を奮い立たせる事ができない。 「まいったな…」 彼の口癖なのかもしれないその台詞を口にした時、ふと目の前の雨の中に人影が見えた。 傘を差さずにスタスタと軽やかにこちらの方向に歩いてくる。 当然ながら雨でずぶ濡れになっているはずなのだが、そうは見えないほど軽やかだった。 その影が近づいてくると、何か言っているようで、少しずつ聞こえるようになってきた。
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