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ブツブツと独り言を言い、手にした書類に何かを記入しながら、路地裏の真ん中を影がこちらに向かって近づいてくる。
遠目では分からなかったが、近づくにつれて、影の正体が白衣を着た長い黒髪の女性だと分かった。
そして不思議な事に、女性の頭の上から30センチ程上で半透明な何かが浮いていて、傘のように雨を弾いて女性を守っている。
そのため手元の書類は濡れている様には見えなかった。
あまりの不思議さに言葉を失った青年は、女性がこちらに向かってくるのを、ただ見る事しか出来なかった。
そんな彼の前を女性が通り過ぎようとした時、急に立ち止まり、顔だけをこちらに向けた。
『君は……ここで何を……しているのかな?ひょっとして……あちら側の……関係者……?』
「…え?いやっ、関係者?」
『……協定違反は……重罪……よって殺処分……。』
「殺…って!ちょっと、あんた物騒だな!急に何言ってるんだ!?俺はただここで雨宿りしているだけだ!トチ狂ってんじゃねーよ!」
『……?』
女性は僅かに首をかしげた。
『ここは……人払いの予約を……しているハズ……、……一般人の侵入は……警備の……職務怠慢……。』
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