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万年平社員の父さんと、その会社の事務をしている母さんなのだ。収入は中の下くらいの貧しい暮らしだけどね。それはそれで、不満がある訳ではないけど、贅沢は言わないから、日曜くらいはゆっくり眠りたい。
「ねぇちゃん、今日は遅いの? 父さん達も遅いしご飯どうする?」
寝癖の残る頭を手櫛で整えながら台所へ。今日は両親共に家には居ない。仕事ではなく、仲が良いと言うかなんと言うか、万年恋人同士な両親なのだ、それは子供を置いて旅行なりなんなりだ。詳しくは訊いてやらん。
いつもの事だ、慣れっこである。そんな俺が ねぇちゃんに尋ねてみると、徐に居間を指差された。指差された先。視線をテーブルの上に自然と向けると封筒が置いてある事に気付く。
「私はアキラさんとお食事に行きますから、私の分も使っていいですわよ」
恐らくあの封筒の中身は、両親が用意したであろう食費だ。ねぇちゃんがデートと言うのであれば独り占めだな。
「やりぃ♪」
今日は何食べようかな、と少し早めの夕食を考えながら、期待に胸を躍らせて封筒を開けると、中には2千円が入っていた。1人千円。ねぇちゃんとの分を合わせても、どう考えても2千円。
(うん……期待はしてなかったけどね。今時ないよな)
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