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「何だよそれ? ベタなネーミングだな?」
電話の奥でフッフッフッと不気味にクルスは笑った。演技臭く笑ってみせた。この笑いを聞いて楽しめた思い出はない。別に期待などしていないシンが問うと、
『名前はウチが考えたんだよ。だってね、題名も何も書いてなくてさ、多分そんな感じするし』
そうクルスが言った。期待通りではない。期待を通り越してガッカリだったシンは肩を落とす。せっかくの休みは終った、そう思いながらもシンは、
「馬鹿だろ、お前? うーん、まっいっか、どうせ暇だし行ってやるよ。場所は?」
言ってしまうのだった。行ってしまうと言う事なのだ。場所は、今は使われていないビルの一室。幽霊を信じている訳ではないシンだが、流石にテンションが上がる場所ではない。
外見は普通のビルだし、廃墟と言ってもまだ新しい方なのか、掃除をすれば今にでも使えそうな内装。4階建てのビルで、使い勝手も良さそうに見えるのだが、テナント募集はしていないようだ。そんな一室にシン達は集まったのだ。
階段を上がって直ぐ側の部屋。2階の一室に入ると、中は机が壁際に詰められて、真ん中に学校で使う小さな机と、椅子が4つ周りに置いてあるのが確認できる。
そこで異様な空気を醸し出している少女がクルスだ。茶色の髪はセミロングに伸ばされているが、長さが整っていない。それは美容室に通う事が苦手な為、髪の毛は自分でカットしているからだという。そんなクルスは、
「ハカセ……本貸して」
言って、メガネを掛けた男子に手を伸ばす。天然パーマなメガネ男子。シャツにベストを好んで着用し、インテリな雰囲気を醸し出す。
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