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部屋には暫くの沈黙が続いた。しかし両親の反対も、黒羽の決意も、変わりはしなかった。
長老は悩んだ。若き同胞の決意は固く、揺るぎ無い。しかし両親とて一週間も行方知れずだった我が子が、運良く助けられたとはいえ瀕死だったという事実。そしてきちんと里へと帰ってきてくれた事。二度と外には出したくないであろう。
「…ならば、ヤタガラス神にお訊きしよう。ヤタガラス神がお許しにならなかった時はきっぱり諦めなさい。良いか?三人共。」
ヤタガラス神は、この里で崇拝されている三本脚の鴉の姿をした神の事である。
ヤタガラス神を祀ってある里の神社へ行き、供物を捧げ願いを問う。それが許されるものならば、神社内に張り巡らされた鈴飾りが鳴り響くのだ。
「…神のお許しなら…しかたありませんな。」
「そうね…ヤタガラス神様なら、きっと正しい答えを下さるわ。」
両親が納得すると、黒羽も了承した。
長老を含めた四人は、今日の夕方に捕れた川魚を供物に神社へと向かった。
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