11213人が本棚に入れています
本棚に追加
流石に蒼くなった店番は、直ぐ様主人を連れてきた。
「芹沢はん…今は金子足りとらんのです…。今日のところはお引き取り願えまへんか?」
またか…という表情の主人。
芹沢はフッと鼻で笑う。
「ほう…?天誅組にやる金はあっても、儂等にやる金はないと?」
天誅組…尊攘過激派の一部のことだ。
実を言えば、芹沢が先程言った放火を思わせる言葉はただの脅し。
火付けが大罪なのは、芹沢も当然承知している。
だが…。
「壬生狼なんぞにやるくらいなら、長州者にくれた方がずっとマシやわ……」
ボソリと呟かれたこの本音は、正に“火種”となったのだ。
「…平山…土蔵に火を放て」
最初のコメントを投稿しよう!