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「………」
河原に佇む一人の男。
その足元には、複数の屍が転がっている。
刃を濡らす赤い血を払うと、カチンと刀を納めた。
――……春の月……
眩く光る月明かりが、男の顔を照らす。
錦絵になりそうな程整った顔に返り血を浴び、鮮やかな赤が歪な美しさを与えていた。
春の月は好きだが……今夜の月は好かねぇな。
満月は掴めそうな程に大きく……そして紅く光る。
男には、その紅が禍々しくさえ思えた。
ソレは、突然だった。
雲一つ無いのに、月はその光を失う。
……まるでフッと瞬きするように。
「!?」
驚いた時には、月は先程と何ら変わらずに輝いていた。
……何だってんだ……?
不可思議な現象に眉をひそめつつ、一歩踏み出すと……。
前方の上空から、何かが降ってくるのに気付く。
「……今度は何だよ……?」
目を凝らして見ると……人!?
人だと認識すると同時に、身体が勝手に動いていた。
クソッ!間に合えよ……!!
―――ドサッ!
無我夢中で捕まえたその身体は、見た事もない着物を纏っていた。
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