第二章

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「………」 河原に佇む一人の男。 その足元には、複数の屍が転がっている。 刃を濡らす赤い血を払うと、カチンと刀を納めた。 ――……春の月…… 眩く光る月明かりが、男の顔を照らす。 錦絵になりそうな程整った顔に返り血を浴び、鮮やかな赤が歪な美しさを与えていた。 春の月は好きだが……今夜の月は好かねぇな。 満月は掴めそうな程に大きく……そして紅く光る。 男には、その紅が禍々しくさえ思えた。 ソレは、突然だった。 雲一つ無いのに、月はその光を失う。 ……まるでフッと瞬きするように。 「!?」 驚いた時には、月は先程と何ら変わらずに輝いていた。 ……何だってんだ……? 不可思議な現象に眉をひそめつつ、一歩踏み出すと……。 前方の上空から、何かが降ってくるのに気付く。 「……今度は何だよ……?」 目を凝らして見ると……人!? 人だと認識すると同時に、身体が勝手に動いていた。 クソッ!間に合えよ……!! ―――ドサッ! 無我夢中で捕まえたその身体は、見た事もない着物を纏っていた。
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