第二章

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「ここは壬生浪士組屯所だ」 独り言に返ってきた答えは、あまりに意外な物。 「っ!?」 思わずガバッと上体を起こした。 その動作は焦っているようにも見え、男の切れ長の瞳はスッと細められる。 「演劇部か何か? 凄いリアルなセットだねぇ。 発表会とかやるなら私も呼んで? 私、新撰組大好きなの!」 笑顔でペラペラと話す彼女に、男は眉間に深々と皺を刻んだ。 「意味不明な事言いやがって……。お前……何者だ?素直に答えろよ。 嘘を言えばその首飛ぶからな」 スラリと抜かれた刀は鈍く光り、どこか血の臭いを漂わせる。 喉に突き付けられた刃は、息が詰まるような緊張感を感じさせた。 ――血の、臭い……本物……? 刀は彼にしっくりと馴染み、違和感の欠片もない。 睨み付けてくる眼差しは、彼が本気だと告げていた。 「……」 「!?お前っ……」 そっと指先を刃に滑らせると、つぅ……と血が溢れる。 本物、だ……。 「……わ、たし……私は一ノ瀬旭(イチノセアサヒ)……。 付かぬ事をお聞きしますが……今、何年です?」 血が、流れる。 「あ?文久三年だろ。 一ノ瀬、お前……どっから来た?」 流れた赤はポタリと零れ落ちた。 私は、タイムスリップしてしまったらしい。
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