第八章

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――――――――― 『やぁ、……は……っむ……』 色づいた頬。 とろけた表情。 苦しげな声。 震える身体。 ……指に感じた熱くて小さな舌も。 脳裏にこびりついて離れない。 思い出す度に背筋にぞくぞくとしたものが走る。 「どうしたんだ、俺は……」 斎藤一は、己の心境に戸惑っていた。 旭にあんな事をした斎藤。 あの行為は他の隊士達に対する牽制のため。 そして、土方を召喚するためだった。 野獣のような目で旭を見る隊士達も、斎藤の女だと勘違いしてしまえば下手に手は出せない。 口付けしていると思えば、心配そうに旭をチラ見する土方が、彼女を強制送還するだろう。 概ね計画通りに事は進んだ。 彼の誤算は、ただ一つ。 ――この俺が…… 自分が旭を欲してしまった事。 強固な理性を自負していたはずなのに……。 「駄目だ……。素振りでもするか」 斎藤はフラリと自室を出る。 様々な感情を呑み込んで、皐月の夜は更けていった。 それから暫く、隊士達の間では斎藤、土方、旭の三つ巴説が噂されていたそうだ。
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