第九章

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「んだよー。やっぱり旭には色恋は早かったか?」 「……だって、そういうのキョーミないもんっ」 ぷくっと頬を膨らませる旭。 その表情はまだ幼さが残っている。 再び紋白蝶とじゃれ始めた旭に、佐々木は独り言ちた。 「佐伯さんにでも聞いてもらうかな……」 「さえき……さん?」 振り向いた旭の頭に、蝶がゆらりと止まる。 それに気付いた佐々木は、笑顔で口を開いた。 「そ。佐伯又三郎さんっつぅんだ。 凄い好い人で、相談事も親身になって聞いてくれるんだよ。……旭とは違ってな!」 「む……っ!」 ……事実だ。旭は言い返せない。 口をつぐむ旭を笑って、佐々木は稽古だから、と去っていく。 紋白蝶は、旭の頭からひらひらと飛び立っていった。
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