第十章

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「旭はこれ知っとる?」 徐に懐から取り出したのは、一冊の冊子。 「?私、文字読めないんだぁ。私の時代のとちょっと違うの」 「そうなん?これはな、豊玉発句集いうねん」 山崎は、満面の笑みを浮かべた。 ――――――――― その頃、屯所出入口…。 「今、帰ったぞ」 壬生浪士組筆頭局長、芹沢鴨。 彼を先頭にして、芹沢派ご一行が帰営した。 「お帰りなさいませ、芹沢先生」 近藤は自然な笑顔で彼らを出迎える。 …近藤さんも人が良すぎるんだ…。 土方は、無理矢理笑みを張り付けていた。 芹沢達からは、酒と白粉の匂いがプンプンする。 まだ陽も沈んでねぇってのに、いいご身分だぜ…。 どうせ隊務ほったらかして、遊郭に行ってたんだろうよ! 「うむ。儂が不在の間、変わりなかったか?」 「特にはありませんね。女中を一人雇いましたが、筆頭局長が気になさる程の者ではございません」 一息で言い切った土方。 その皮肉った言い方が、芹沢の興味を擽る。 「ほう?…その者に後で挨拶に来るよう伝えろ」 芹沢はニヤリと笑った。
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