第十章

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「この前から女中として働かせてもらってます。一ノ瀬旭ですっ」 ハキハキと自己紹介した旭。 芹沢は重そうな鉄扇で軽々と自身を扇ぐ。 「…それでは失礼させていただ「一ノ瀬。お前は残れ」 旭を連れて退室しようとした土方の眉間に、一瞬皺が寄った。 「儂はこいつと二人で話したいのだ。…問題なかろう?」 微笑する芹沢に、土方はギリギリと歯を噛み締める。 芹沢の微笑みは、まるで全てを見透かしているようで…。 「…しかし…っ」 反論しようとした土方の袖が、ツン…と引かれた。 「土方さんの大事なアレ、まだ烝さんが持ってるけど…いいの?」 「!………失礼します…」 コソッと告げられた言葉に、土方は瞠若する。 旭が空気を読んで言ったのか、はたまた深くは考えていないのか。 土方には見当もつかなかったが。
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