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「…本当に何もなかったのか?」
訝しげに旭を見る土方。
芹沢とのやり取りを話したら、この返答だ。
因みに、沖田はとぼとぼと自室に帰っていった。
「うんっ。何にも!」
旭は普段通りで、嘘をついているようには見えない。
だが、土方は気付いてしまった。
旭の白い首筋に咲いた、真っ赤な華に。
…芹沢の奴…ッ!
土方自身、芹沢に挑発されている自覚は…ある。
いつもは素知らぬ顔で受け流していたが……。
―――――――――
行灯の柔らかい明かりを消すと、月明かりが存在感を主張する。
すやすや眠る彼女を抱き込むと、荒んだ心が幾らか鎮まった。
「まったく…何なんだ、お前は…」
何故こんなに心を掻き乱すのか。
いつもは耐えられる芹沢からの挑発。
…今回は、我慢ならない。
サラサラの髪を退かすと、露になる柔肌、…紅い痕。
そっと唇を寄せて、思い切り吸い付いた。
芹沢の痕を自分の痕で塗りつぶすように…。
――こいつが寝てないと、こんな事もできねぇなんてな…
土方は内心自嘲したが、その顔は満足げに微笑んでいた。
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