第十一章

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「………まだ、って何?」 呆気にとられていた藤堂が、やっとのことで口を動かす。 旭は瞳をしばたかせた。 「そのままの、意味だが?」 フッと不敵に笑う斎藤。 歓迎会の時に感じた思い。 旭の首筋の紅い華に、抱いた感情は嫉妬だった。 「俺は、土方副長にも譲るつもりはないからな」 「何をー?」 旭のすっとぼけた声に、藤堂はズルッとずっこけた。 格好良くきめたつもりの斎藤は、羞恥に震える。 お前を、だよ! 二人が同じことを思ったのは、言うまでもない。 ――何だろ?なんか胸がモヤモヤするんだよな… 藤堂は、荷物を持ち直して首を振る。 「早く帰ろうぜ」 三人は、止まっていた脚を再び進め始めた。
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