壱、他人は兄弟の始まり

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和の国と呼ばれていた時代。 西に東。 北へ南。 それぞれの土地を警備する役人。下から人々の食を支える農民。そして、国を司る帝によりこの国は存在している。 国に脈々と受け継がれる話がある。 鬼隠し、という名のお伽話。 ある日。 国全体が貧しかった時期があった。 飢餓に苦しみ、疫病が増える年。 帝は憂いながらも考えた。 国を豊かにするにはどうすればいいかと。 考えた末、帝は神を召喚することを思いつく。 八百万の神と言われるように、別名『神国』と和の国は呼ばれている。 必要なのは供物だ。 躊躇わず、帝は「子供を地方から集めよ」と公示した。 子は神から授かりし万物。 それを利用しようと考えたのだ。 子供を召集し、彼らは『神児』の名付けられ親と離れて京に暮らすようになる。 読み書き、舞や武芸を無理矢理子供は習わせられた。 賢い子に仕上げるために。 期は熟した。 選ばれたのは、十歳ぐらいの幼げが残る少年。 眼差しは暗く、瞳の輝きが無いに等しかった。 帝は少年を指差し、「その子供を、張り付けにせよ」と皆に命じた。 子供はいけにえ。 供物に過ぎない。 内心、反対論はあったのが官吏達は命令に従った。 抵抗する少年を気絶させ大きな丸太に縛り付け、躊躇いながらも薪に火をつけたのだ。 そして――――…。 ● ● ● ●
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