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新しい傘を買ってもらった時、早く雨が降らぬものかと毎日浮かれたものだった。あの頃は純粋だったものだ。
しかし、それは今も変わらないようで、俺は奴の言葉に惑い惑わされてまさにカーニバル状態なのである。
静寂なる授業が終わり、遂に念願の昼休みがきた。クラスから続々と人が出ていく。その殆どが購買へ向かうのだろう。我が校人気No.1のエクレアを買うため、皆毎日のように競い合っているのである。
俺はというと、後ろを振り返る事に気恥ずかしさを覚え、ファミリーレストランで己の頼んだ料理が運ばれて来る時の如く、気にせぬ素振りでやり過ごしている訳であって…ああ、俺も購買に行きたいのに。
どぎまぎという表現が驚くほど似合う俺の後ろで椅子を引く音がした。思わず後ろを振り返っ「痛え!」
俺の顔面に購買の紙袋が飛び込んできた。咄嗟の出来事に思考が停止し、紙袋は生ぬるい音を立てながら地面に着地した。正確には、着地失敗。中からパンがひょっこりとこんにちは。
「あのなあ…」
犯人はもちろん後ろの「奴」だ。何やら誇らしげな顔で俺を見下している。
「カレーコロッケパン」
口角を上げ、渾身のどや顔で彼女が発した言葉は、俺の脳天を貫くほどの衝撃を与えるはずもなく。演じずとも、自分がアホ面になっているのが伝わってくるほどの意味不明な発言だった。
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