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「お前…まさか」
奴が、妖艶に笑う。満月が似合いそうなその笑顔に、ざわざわと風が吹き荒れ…「なわけあるか。何がしたいんだ?」
まだオトモダチにもなってやしないんだぞ、というべきかオトモダチからお願いします、というべきか。そんなマゾヒストな一面は無いはずだ。無いはずだ…。
「一ヶ月前の今日、あなたは購買でカレーコロッケパンを買った」
話が見えてこない。他人の会話に途中参加した覚えはない。しかしそんな俺を横目に、奴は話をどんどん先まで進めやがった。
「二ヶ月前もあなたはカレーコロッケパンを買ったのよ!三ヶ月…四ヶ月前も!」
奴は深く息を吸うと、「犯人はお前だ!」、いや、「訴えてやる!」…「あなたが私の兄さんを!」等と言い放ちそうな怒号で俺に叫んだ。
「あなた、おかしい!」
しっかりと伸ばされた人差し指が、俺に向いているなんて信じたくもなかった。だから、ね。
俺は奴の人差し指を握った。奴は少し戸惑うように後ずさる。躊躇はしない。人差し指を掴んだまま分度器の如く、180度先へ。奴の指が己を指した瞬間、俺は吐き捨てた。
「おかしいのはお前だ。」
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