ふまじめでつよいうえはらくん

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    彼女はツンと吊り上がった目を丸くするというマジックを俺にお披露目してくれた。しかしその目はすぐにサインコサインタンジェントを求められそうな程の吊り目に姿を変えてしまった。     「何言ってるのアンタ」     「やっと本性を現したか春女」     ここにきて「おまっとさんでした」と言わんばかりに俺は彼女の名前を読んだ。はるな。早乙女春女。それがこのネジの数十本ぶっ飛んだような女の名前なのだ。     「気安く呼ばないでくれる? 天使(笑)さん」    「まさか俺のクラスの隠れ美少女、早乙女春女がこんな奴だったとはな」     やれやれ、と言ったところか。凶暴で、部品が足りなくて、そして…畜生。やっぱりエンジェルだぜ。     「あたしの用はもう済んだわ。あとはアンタ一人で寂しくカレーコロッケパンでも食べてなさい。勿論、あたしへの感謝の念を込めて。」     本日2回目の人差し指によるアプローチを頂いてしまった。どうせ好かれるなら足が良いなあ、等と俺が下らない事を考えていると、春女は足早に教室から離脱してしまった。     「結局、どんな用事が遂行されていたんだ。」     俺は床に落ちた潰れかけのパンを拾い、おもむろに口へと運んだ。     「うん。やっぱりこの味だな。」    
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