EPISOdE2.きっかけ。

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蓼谷くんはハァハァと肩で息をして、汗を拭う。 「気がついたら…あきちゃんが居なくて…っ凄い焦った…」 息が落ち着いてきた蓼谷くんは、あたしの手を握る力を強める。 「何か気になる屋台があったら、手を引いて止めていいから。 またはぐれたらいけないし、繋いでよ?」 ニコッと笑みを向けて、あたしの手を引きながら歩き出す。 あたしの心臓はさっきよりドキドキし出して、繋がれた右手に熱が集中する。 りんご飴の屋台に再び差し掛かって、あたしが意識をそっちに向けると、 「りんご飴が食べたい?」 蓼谷くんが屋台を指差してあたしに聞いてくる。 空相手だとあたしには似合わないし、って振り切るところだけど 「うん…いい、かな?」 蓼谷くん相手だと、素直な気持ちが出てくる。 「いいよ。行こっか。」 蓼谷くんは何も気にせず、りんご飴の屋台へ手を引いてくれる。 「あたしなんかにりんご飴って似合わない、でしょ?」 あはは、って笑いながら蓼谷くんに聞く。 言われる前に、言ってしまおうって思ったあたしの発言。 でも、 「何で?りんご飴好きなあきちゃん、可愛いよ?」 可愛いって言われた事にびっくりして、りんご飴を落としそうになる。 「か…可愛いって…蓼谷くん、目ぇ大丈夫??」 驚きから、つい口からそんなセリフが出る。 「酷いなあー。あきちゃんは可愛いよ?自分が思ってるより、ずっと、ね。」 ボンって音がするくらい、あたしの顔は真っ赤になってたと思う。 夜で、帽子を被ってきて良かったとここまで思ったことは無かったと思う。 「う…あり、がと…」 帽子を目深に被ったあたしの頭をポンポン、と蓼谷くんが撫でて、歩みを進める。 それから暫くして、空も再び合流し、3人で回り始めた。 空が来てから手は離れたけど、右手の熱は冷める事が無かった。
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