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空は結局かき氷の全制覇を泣く泣く諦めて、三人でゆっくり祭りを回ることにした。
時たま、蓼谷くんが目が合うと笑いかけてくることが凄くあたしの心臓に悪い。
そんなあたしの気持ちはお構い無しに、空ははしまきやからあげ、フライドポテトの屋台に目を輝かせては口一杯に頬張ってる。
蓼谷くんとあたしはかき氷を溶かしながらゆっくり食べる。
蓼谷くんはブルーハワイ、あたしは苺の練乳がけ。
苺の甘味を練乳がさらに引き立てて凄く美味しい。
「美味しい?あきちゃん。」
蓼谷くんが空の大食いから視線をはずしてあたしに聞く。
因みにあたしのかき氷は蓼谷くんの奢り。
断ったんだけどさっき見失ったお詫びとかなんとかいろんな理由をつけられて、結局奢られてしまった。
「うん!凄く美味しいよ!」
急に話しかけられたあたしはびっくりしてしまって、大きな声で返してしまった。
「ならよかった。あ、一口もらってもいい?」
あたしは買ってもらった側なのでもちろん、と頷く。
すると蓼谷くんはいきなり口を開ける。
「ちょーだい?」
どうしてほしいのかわかったあたしは、顔から火が吹くくらい真っ赤になった。
空にするのとは訳が違う。
恥ずかしい。でも口を開けて待ってる蓼谷くんはもっと恥ずかしいだろう。
よし、と意気込んだあたしは、ストロースプーンに苺シロップと練乳がかかった氷を少し掬う。
そして震える手で蓼谷くんの口元へ持ってく。
ぱくり、と蓼谷くんはあたしの持つストロースプーンをくわえ、すぐに口から離す。
「うん、美味しいね。あ、俺の食べてみる?」
そう言って蓼谷くんはブルーハワイがかかった氷を掬ってあたしに向けてくる。
向けられたあたしは目をぎゅっと瞑り、さっきの蓼谷くんみたいにぱくり、とくわえる。
「どう?美味しい?」
にこやかな笑みを向けてくる。
正直なところ、ドキドキしすぎて味なんてわからない。
コクコクと頷くと、よかったと言って、蓼谷くんは大食いして喉に食べ物をつまらせている空へ、苦笑いしながらジュースを渡す。
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