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空が馬鹿だと、あたしと蓼谷くんは再確認した。
3杯目のかき氷を食べ終わったころ、空は想像通り腹痛に悩まされてお手洗いへダッシュ。
再び残されたあたし達は、2人で祭りを回る事にした。
「あっ射的あるっ!あたしあれ苦手だから、欲しいものあっても取れないんだよねー。」
射的の屋台を見てポツリと漏らす。
射的の景品に可愛いクマのぬいぐるみがあったけど、あたしには似合わないし取れないから諦めて視線をクマから外す。
けれどいきなり蓼谷くんは、その射的の屋台の方へ歩いて行く。
「あきちゃん、欲しいものってどれ?」
屋台の前に着いて、景品の方を指差す蓼谷くん。
あたしは思わず躊躇ってしまう。
「え…べ、別に特にない、よ?」
あたしの答えとは裏腹に、蓼谷くんは屋台のおじさんに500円を渡して、射的の銃を構える。
銃の先端は、あたしが見ていたクマに向いている。
そして、
パァンッ
蓼谷くんの撃った弾は綺麗にクマに当たって、グラついたクマは台から落ちていく。
「凄っ!蓼谷くんって射的上手いんだね!」
あたしがそう言って蓼谷くんの方を向くと、
「はい。あげる。」
蓼谷くんはあたしに落としたクマを渡してきた。
「えっ!?でも、蓼谷くんがせっかく落としたのに…」
あたしが貰えずにいると、蓼谷くんはあたしの手にクマを握らせて
「俺が持ってても仕方ないし、せっかく落としたから貰ってほしいな。
女の子なんだから、少し位欲張っても、ね。」
と言った。
普段から女扱いされてないあたしには女扱いされる免疫が無い。
あたしは蓼谷くんの言葉に顔を真っ赤にして、
「じゃ…貰う…。ありがと…。」
と、貰ったクマに顔を隠すようにうずめる。
今思えば、この時からあたしは、彼の事を好きになりかけてたのかもしれない。
凄く、単純な事なのに。
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