生きたのは知らない

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「依頼人です。今日の三時にいらっしゃいます」 「三時ねぇ~」 由美は時計をチラリと見た。2時59分だった。 「本当に三時?」 「ええ・・・」 遠藤が返事をした途端、インターホンが鳴り響いた。 「………本当だ」 由美はぽかんと口をあけて驚いた 遠藤は今三時になっていたと今さら気づいた。 「依頼人はどこで電話をかけてきたんでしょうか?」 「携帯」 「あ、そうか・・・」 「いいから早く依頼人を入れて」 遠藤は急いで玄関のドアを開けに行った。由美はその間に焼き芋を片づけようとする。慌てて片づけようとして、飲みかけのお茶をひっくり返す。 「あー!」 こぼれたお茶が机から絨毯に落ちそうになる。由美は手を出して落ちていくお茶を遮った。新品の絨毯だ!濡らしてたまるか! 「熱っ!熱い!ちょっと遠藤くん!!!熱っ!」 手を振り上げると、手のひらで掬い溜まった熱いお茶が宙を舞った。 「こちらです」 遠藤が依頼人を案内して部屋へ入ってきた。宙を舞うお茶が依頼人に飛んでいく。 「え?」 依頼人が飛んでくるお茶に唖然とする。 ビチャッ 依頼人にお茶が当たった。
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