712人が本棚に入れています
本棚に追加
「あなた、目に悪いわよ」
たまたま部屋の前の廊下を歩いて通り過ぎた妻に声をかけられ、彼はひとこと、あぁ、とだけ答えた。
その返事が妻の耳に届いたかどうかは知らないが、彼は忠告に従って部屋に明かりを点ける訳でもなく、再びパソコンに向かう。
真っ暗な部屋。
およそ光りと呼べるものは、パソコンモニターと、壁掛け時計の針にペイントされた薄緑色の蛍光塗料と、真っ赤なタバコの先端のみ。
目に悪い、と言われても確かに仕方のない状況ではある。
最初のコメントを投稿しよう!