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ここはある田舎の丘陵に建っているフォアローゼスという孤児院…その名の由来は院庭にある薔薇薗に院長が大切に育てた赤・黄・白・黒の4色の薔薇が咲き乱れていることから付けられたらしい。
院内では今からおやつの時間の様でテーブルにケーキが3つ並んでいて3人の子供が座っていた。
少女「ねぇ、ハル~お願い❤ いいでしょ?」
10歳前後の少女が上目遣いをしながら、ハルと言う少年におやつのケーキをおねだりしている。
ハル「嫌だよ、この前もお菓子やっただろ?」
少女「………グスン……いつも『俺はれでぃふぁーすとだ』とか言ってるくせに…うぅ…」
ハル「………あぁもう! 分かったよ、ほら!」
ハルは少女と反対の方を向きながらケーキを差し出した。
少女「ありがとう、ハル❤」
ハル「……(やっぱり泣きマネか!)」
ハルはムスッとしていたが、おかまいなしに少女はにこっと笑ってケーキを食べようとすると…
別の少年「…おいアキ、そういえばお前は将来モデルか女優になりたいんじゃなかったか?」
ハルからケーキを貰ったアキと呼ばれた少女はもう一人の少年の方を向いた。
アキ「うん、なるよ? それがどうしたの、ナツ?」
さも将来が約束されているかの様に自信満々に答えるアキ。
ナツ「だったらケーキは2コ食べない方がいいな」
アキ「………なんで!?」
物凄く嫌そうな顔でナツに聞き返すアキ。
ナツ「モデルや女優はまず外見が大切だろ? ケーキみたいにカロリーの高いもの2コも食べたらぶくぶく太って将来大変だぞ」
アキ「……(カロリーって何だろ?)」
真剣な表情で考え込むアキ。
アキ「………とにかく太るのは嫌だなぁ、どうしたらいいの?」
ナツ「とりあえず今日はケーキは1コで我慢しろよ、俺が貰ってやるから」
爽やかな表情で丸め込もうとしているナツ。
アキ「ええ!? …いや……でも…」
俯き気味に物凄く真剣に悩み始めたアキにナツも真剣な表情を向けた。
ナツ「太ったら大変だぞ、食堂のミーシャおばさんも昔は痩せてたって言ってたけど今じゃあれだぞ?」
アキ「ううっ……確かに太るのは困る…分かったよ……女優になるためだから……はい!」
今度はアキがさっきのハルの様にナツと反対の方を向いてケーキを差し出した。
ナツ「うん、アキはきっと人気の女優になれるよ」
適当にアキのフォローをしてからいざケーキを食べようとしたナツはここで異変に気付いた。
ナツ「あれ?」
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