恐ろしい日

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… … … 必死につなぎ止めておいた現実を、無惨に破壊された気分だ。 全身がワナワナと痙攣し、息が苦しくなる。 さっきまで血の気が引いていた身体が、今度は勢いよく血が上っていく。 渾身の力を込めて、両拳をテーブルにダンッと叩きつけると、私は叫んだ。 「私はイケメンとは付き合いません!!!」 ぽかんと口を開けた笹丘さんは、今まで見たこともないようなまぬけな顔で私を見つめ 「えぇえっ!!?」 と一言放った。 プリンス笹丘をそのままに、休憩室を出て行き、しかもまっすぐ店を通り抜け、外まで飛び出した。 外は車や人や色々な騒音で溢れていて、私を徐々に冷静にさせてくれる。 深呼吸をすると、少し落ち着きを取り戻してきて、さすがにさっきの断り方はマズかったなぁと、またお腹が痛くなる。 久保田愛梨(くぼたあいり)、21歳。 私は正真正銘、自他共に認める『イケメン恐怖症』なのだ。
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