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さて、そんな一件も過ぎ落ち着いてきた11月頃。
19歳になる最年少の副長助勤、三番隊組長の斉藤一が鍛錬のあと、屯所の庭にある井戸で水を浴びようとすると、同じく19歳の八番隊組長の藤堂平助が走ってきて何やら顔を真っ青にしている。
普段から落ち着きがあるとは言えない同志に軽くため息をつくと、声を出せないでいるようなので尋ねてやった。
「どうしたんだ平助。」
すると深呼吸をして息を切らしながらも言葉を発した。
「そ、それがっ!土方さんのっ!落ちてっ!女の子っ!」
さっぱりわけがわからない。
水を飲ませようとしたが、面倒になったので一は木桶いっぱいに水を汲むと思い切りそれを、平助にぶちまけた。
「!!!!」
なんにしろ夏ならば涼しかったかもしれないが、今は風が冷たい11月。
しかも走っていて汗がでており、その汗により若干体が冷えていたところに冷水をぶちまけられて、またもや平助は声を出せなくなった。
「な、な、なにしゅるのさっ!は、はじめくん!」
寒さに震え口をうまく動かせないながら訴える平助を一瞥すると
「隊長であるお前がそれしきの運動で息を切らし話せなくなったことや、それしきの水に打ち勝てる体を作っていないのが悪い。つまり鍛錬不足だ。」
と、やや冷めた目でそういった。
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