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少女に向かったのは総司と平助で、土方を少女の視界から隠すように中腰で話しかけていた。
「あの怒鳴ることしか能がないバカは置いといて、君の名前は?私は総司といいます。」
「あ、えっと僕は平助っていうんだ。」
にっこり笑って二人は少女に話しかけたが、少女は無表情に彼らをみつめていた。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
2人は困ったように顔を見合わせた。
すると近藤がやってきて彼女に目の位置を合わせると、
「人に話しかけられたら、無視するのはよくないことだ。反応をしなさい。」
と、少女の頭の上に手を載せてやんわりと説教をする。
「・・・・しおん」
ゆっくりと告げられた言葉は、微かな声だったのに凛としていて、澄んだ声だった。
すると近藤はゆっくりと頭を撫でて笑う。
「そうか。しおんという名なのだな?良い名を貰ったじゃないか。私は近藤という。」
すると彼女は小さな声で「こんどー」と発音する。
そしてゆっくりと彼女は片腕を挙げて総司と平助を順番に指差して「そーじ」「へーすけ」
と発音した。
総司と平助は嬉しかったのか2人で手をたたいていた。
「人を指差すのはいけないよ。君はどこから来たのかな?私は敬助というんだ。」
山南がふわっと微笑み彼女に問いかける。
「けーすけ」
と言われた通り、指をささずに山南の名前を呼ぶと
「暗い部屋の中」
と答えた。
「お前は日本人か?」
一がしおんに問うが、しおんは一を見つめたまま。
「・・・・」
「・・・・」
「・・斉藤だ。」
「さいとー。日本人だよ。でもずっと部屋の中にいた。」
どうやら名前を言うのを待っていたらしい。彼女は布団の上に座るときょろきょろと周りを見渡した。
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