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このために神社に御祈りまでした貴己に救いはあるのだろうか?
「・・・・・」
どうやら神はストレッチをしていたようで願いを聞いて居なかったようだ。
「(1番前の窓側端だと・・・・)」
席に座り完全に硬直する貴己。
「(救いは景色が良いことかな)」
窓を眺め春風にふける。
「(・・・・は!こんなことしてる場合じゃない!!)」
当初の目的を思い出したようだ。
「(友達作りだ!!初日から溢れるのは痛い・・・)」
後ろを席を覗く。
「・・・・・・・」
そこには腰まである艶やかな茶髪ロングヘヤーの令嬢のような素敵な女の子がいた。
「・・・・・」
手で長い髪を耳にかけ小説を読んでいる。
「・・・・・チラッ」
「!!」
覗いていたのがバレたようだ。
咄嗟に前に振り戻る。
「(無理無理無理無理無理!!ただでさえ女子と話すの苦手な俺にあの絶世の美女に話しかけれるだけの度量はない!!)」
完全に萎縮してしまっている貴己。
周りと違いこの場所だけに静寂が生まれている。
「(この空気、吐きそうだ)」
だが沈黙は続いた。
「・・・・・・」
「(とにかく何か会話をしなきゃ)」
何か使命感を感じた貴己は恐る恐る振り返る。
絶世の美女が貴己と目を合わせる。
ただそれだけなのに心拍数は急上昇していく。
「あの・・・・」
やっと出た一言。
「・・・・・・・」
まっすぐ見つめる美しいが鋭い目。
蛇に睨まれた蛙のような気持ちにされた。
思わず息を飲んだ。
「あの・・・・お名前は?」
まるで下手くそなナンパのような切り出し方に後悔をしつつもここで引き下がる訳にもいかない。
「(しかも緊張のせいで声が上がってしまった・・・恥ずかしい)」
顔を赤らめうつ向いてしまいカッコ悪さに磨きが掛かる。
友達作りにさっそく挫折しそうな気持ちになりつつ、彼女の反応が気になって顔を上げる。
彼女はきょとんとした顔になっていた。
「(あぁ・・・絶対引かれてるなこれ・・・・)」
「・・・・・あき」
「え!?」
「秋村 紅葉(あきむら もみじ)・・・」
「・・・・・・」
彼女は自分の名前を言ったらしい。
「・・・・・名前」
「えっ!?」
「あなたの名前は?・・・」
「あ、え~と・・・優雅岑貴己です」
「優雅岑貴己・・・」
紅葉は貴己の名前を呟くと何事もなかったかのように小説を熟読する作業に戻ってそれ以上何も言わなかった。
「・・・・・・」
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