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私はベッドから飛び降りると、勢いよくクローゼットを開け放つ。
制服に手を伸ばしてから、背後を振り返った。
「……千夏」
「なに?」
「着替えたいんだけど?」
「手伝おっか?」
だから可愛く笑うな!!
「なに言ってるの!!早く出て!」
「いーじゃん。俺、彼氏だよ?」
「彼氏だから余計に恥ずかしいんじゃん!!」
千夏を力付くで部屋から閉め出すと、急いで制服に着替えた。
階段を駆け降りて洗面所へ。
顔を洗って歯磨きしていると、千夏が髪を梳いてくれた。
「茜、髪伸びたね」
腰に迄届く長い髪。
千夏に『長い髪が好きだ』って聞いてから、伸ばし始めたんだけど、気付いてるのかな?
「うん、そろそろ切ろうかなとは思ってるんだけど……」
「なんで?綺麗なのに切ったら勿体ないよ」
鏡越しに視線がぶつかる。
千夏は髪を優しく撫でると微笑んだ。
「俺のために伸ばしてくれたんだろ?」
ドクン、と鼓動が跳ねる。
千夏はやっぱり気付いてくれていたんだ。
凄く、嬉しい。
あったかい気持ちに包まれて、漸く身支度を整えると。
玄関に向かう私達を母が呼び止めた。
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