140人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
1週間後
葵は自身の恐怖心が薄くならず濃くなっている事を彪兎に伝えた。
「カウンセリングを受けたのは失敗かしら」
彪兎は考え得る最悪のパターンを想定した。
「カウンセリングを受けた事で君は多分心のどこかで、生きる事を楽しく感じてしまった」
彪兎は失敗か、と呟いて屋上から空を見上げた。
「それはないわ」
「どうして」
彪兎はつまらなそうに葵を見た。
「私は生きるのが辛いから死ぬのではないの。私は死にたいから死のうとしているのだけれど、恐怖心が邪魔して死ねないのよ」
彪兎は口元を歪めて葵を睨んだ。
「無機質で無感情な声色で言われても」
「ならそのフェンスをよじ登りましょうか」
「…」
彪兎は溜め息を吐いた、嘘じゃない。
分かって居るのだ。
「いや……いいよ」
葵はそのまま回れ右をして屋上から立ち去った。
彪兎は立ち去る彼女を見るのが好きだった。
『もう帰らない』そう背中は言っているのに、翌日も彼女は学校に来るのだ。
死ねないのだ。
最初のコメントを投稿しよう!