No.05 逆効果

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  1週間後 葵は自身の恐怖心が薄くならず濃くなっている事を彪兎に伝えた。 「カウンセリングを受けたのは失敗かしら」 彪兎は考え得る最悪のパターンを想定した。 「カウンセリングを受けた事で君は多分心のどこかで、生きる事を楽しく感じてしまった」 彪兎は失敗か、と呟いて屋上から空を見上げた。 「それはないわ」 「どうして」 彪兎はつまらなそうに葵を見た。 「私は生きるのが辛いから死ぬのではないの。私は死にたいから死のうとしているのだけれど、恐怖心が邪魔して死ねないのよ」 彪兎は口元を歪めて葵を睨んだ。 「無機質で無感情な声色で言われても」 「ならそのフェンスをよじ登りましょうか」 「…」 彪兎は溜め息を吐いた、嘘じゃない。 分かって居るのだ。 「いや……いいよ」 葵はそのまま回れ右をして屋上から立ち去った。 彪兎は立ち去る彼女を見るのが好きだった。 『もう帰らない』そう背中は言っているのに、翌日も彼女は学校に来るのだ。 死ねないのだ。  
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