No.01 葵 幸仔

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  「慣れても車とかなら十分だろ」 「もちろん車でやったわ。でもガムテープの貼り甘くて、隙間から漏れていたわ。だからもう怖くて練炭自殺は出来ない」 「臆病な自殺志願者だな」 彼女は笑ったのだろうか、少しだが彪兎には肩が揺れたように見えた。 「そうね」 「カウンセリングでも行けば、保健室の隣にあるだろ」 葵は眉をひそめた。 もちろん彪兎には分からなかったが、声色で不振がっているのは分かった。 「私は死にたいのよ」 「カウンセリングは自殺を防止する場所じゃなくて、不安や悩みを取り除く場だろ。死ねないなら恐怖心だけでも和らげてもらえよ」 彪兎はさも楽しそうにそう言った。 「やっぱりアナタはズレてる」 笑みを浮かべる彪兎。 「死ぬ時は言ってくれ。俺はそういうのが好きなんだ」  
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