†序章†

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周りを森で囲まれた屋敷は、出入りする人間を選ぶ。 通称、『迷いの森』と呼ばれるその場所は木が生い茂り、道行く人の視界を遮っている。 それに加えて、結界が張り巡らされた敷地内は、強い力を持つ能力者か出入りを許された者以外は立ち入ることが出来ない。 そんな強固な屋敷の奥に隠されるように存在する一つの部屋がある。 窓一つなく、必要最低限の家具しか置かれていない部屋には一人の少年が暮らしている。 艶やかな漆黒の髪に、緋色の瞳。 透き通るような白磁の肌を持つ少年は、表情がほとんどないせいもあり、よく出来た人形のようだ。 「いいかい、朱里(しゅり)。よくお聞き」 「祖母ちゃん?」 少年は、いつになく真剣な顔をした祖母の姿に首を傾げた。
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