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何処か不敵な笑みを称え、
「やろうと言っているんじゃない。預ける、と言っているんだ。『役割』が終わったら、返してくれればいい」
「だが……っ!」
この戦乱の世、未来の保証など何処にもない。
明日敵方が攻め入ってきて、命が断たれないとも限らないのだ。
何時になるかわからない先の約束など、出来る筈がない。
昌幸は少し考えるように頭を指先でつつき、
「……ひとつ、良いことを教えてやろうか?」
「良いこと……?」
突然何を言い出すのだ。
そう思ったが、とりあえず話を聞いてみる。
「例え俺たちが死んでも、この志や絆を受け継いでくれる者が居る。誰だかは、わかるな?」
その言葉に、輝宗ははっとする。
押し返す力が弱まったその一瞬に、昌幸は輝宗に刀を押し付けて手を離した。
輝宗は落ちないように、慌ててそれを捕まえるしかない。
顔を上げると、楽しそうに笑う昌幸の顔があった。
「俺たちの息子たちは、きっといつか出会うだろう。それも俺たちのように、突然。似た者同士、きっと心を通わせ、友となる」
「……それも、お前の目には見えるというのか?」
冗談めかして、苦笑しながら問う輝宗。
ここで肯定されたとしても、きっと自分はもう驚かないだろう。
だが昌幸は首を横に振って、
「勘だ」
とだけ言って、また笑った。
自分の勘は本当によく当たるのだ、と得意顔。
先のことなど、誰にもわからない。
だがこいつの口から聞くと、どうしてか本当になるような気がしてきた。
「……わかった」
輝宗は、刀をしっかりと握り直して頷いた。
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