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──……
気がつくと、四人は元の場所に戻ってきていた。
近くの地面に座していた才蔵が、はっとした様子で立ち上がり、幸村の無事を確認する。
「若様、ご無事で……」
「ああ……」
幸村は生返事を返した。
色んなことが頭の中でぐるぐると回り巡り、どうしたらいいのかわからない。
「おかえり」
棗は悲しげな笑顔で言った。
「わかったかな。僕が神様に戻るには、<神器>を羅刹様に渡さなくちゃならないんだ」
そう言ってから、しかし諦めたように政宗を見る。
「でも、そんなことで同情してくれるほど、お人好しな人はいないよね」
「まあ、な」
政宗は答える。
いくら事情がわかったとは言え、命を差し出す訳にはいかない。
「じゃ、僕らをどうするの? 殺すなら、僕だけにしてよね」
「棗っ!!」
茅の怒号が響いた。
「お前、本気でいってんのか!?俺が、お前の命犠牲にして生きていけるほど、鈍感だと思ってるのか!!」
「でも、茅は悪くないんだ。悪いのはぼくなんだよ……?」
言い争う二人を見ながら、政宗ははぁっと溜め息をついた。
「ったく……さっきの見て殺せるほど、俺は人でなしじゃねぇよ」
「政宗様、どうされるのですか」
小十郎が、嫌な予感がするとでも言いたげな顔をして尋ねる。
政宗はニヤリと笑って、
「おい、お前ら!!」
と二人を呼んだ。
「確かにお前らは俺の家臣たちを傷つけた。けど、だからって殺すのはどうも寝覚めが悪りぃ。だから、お前ら二人に償いの機会をやる」
「?」
意図が読めず、その場にいるほとんどが首を傾げる。
ただふたり、
「政宗、もしかして……」
「政宗様……」
幸村と小十郎はわかっているようだ。
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