274人が本棚に入れています
本棚に追加
──……
「親父と幸村の親父って、知り合いだったのか!?」
輝宗の話が終わるなり、政宗はそう叫んでいた。
小十郎と成実は声こそ出さないものの、政宗と同意見らしい。
二人とも目を丸くして、輝宗を見つめていた。
対して輝宗は、楽しそうににやにやと笑っている。
父のこんな子供のような顔を見るのは、初めてかも知れなかった。
『その後この刀を調べさせた所、幾つか術がかかっていることがわかってな。昌幸の言葉を信じて、義姫に預けておいたんだ』
「そう、なのか……」
それくらいしか、出る言葉が見つからない。
頭には、幸村の兄である信之の姿が浮かんでいた。
あいつもそこそこ変な奴だが、父親はそれ以上に変な奴だったらしい。
あの一家でまともだったのは、幸村だけだったのではないか。
そんな風にさえ思えてきてしまった。
幸村は母親似、信之は父親似なのかもしれない。
そして幸村が、年に似合わず大人びていて、しかし時々妙に子供っぽくなる理由がわかった気がした。
母親──羅刹と共に過ごした幸福な思い出を封じ込められて。
中身が空っぽのまま、『真田家の次男』という重い肩書きを自分の意思と関係なく押し付けられて。
周りとの距離の取り方が分からず、無理矢理その肩書きに似合う者になろうとした結果が、あの性格なのだろう。
そんな風に考えていた時、
「あ、はいはい。殿様にちょっと質問あるんだけど、いい?」
成実が挙手しつつ、そんなことを言った。
物思いに耽っていた政宗は、思考を一旦中断してそちらに意識を向ける。
『どうした、成実?』
「その刀に『いくつか』術がかかってる、って言ってたでしょ? 今殿様があの世から戻ってきてるのの他に、どんな術がかかってるの?」
「…………」
馬鹿にしては、なかなか鋭い所を突いたものだ、と政宗は思う。
最初のコメントを投稿しよう!