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「お前ら二人、俺の所に来い。伊達に入れ!!」
「………………はぁぁぁっ!?」
茅が叫ぶ。
「伊達、てめぇ本気で言ってんのか!? 妖がヒトの仲間になるなんて話、聞いたことねぇぞ!?」
「じゃあ、俺が最初か。いいな一番って」
「……っ、そういう問題じゃねぇだろうが!!」
茅の怒鳴り声も、政宗には右から左らしい。
茅は何か言おうと口をぱくつかせていたが、言うことが見つからず棗を振り向いた。
そこには、優しい笑顔で茅を見つめ返す棗がいた。
「棗……?」
「もう、いいんだよ、茅。僕、わかってたから」
「わかってたって、何を……?」
幸村が尋ねると、
「僕何となく、もう神様には戻れないってわかってたんだ。でも、僕のために頑張ってる茅にそんなこと言えなくて……」
ごめんね、と自虐的に笑う。
「だからさ、もういいよ。妖として生きていくのも、悪くない」
強がりなのは、誰の目にも明らかだった。
「……全部終わって事態が一段落したら、この神社建て直してやるよ。それくらいしか、してやれねぇけどな」
「いいの!?」
棗がぱっと顔を上げて聞いた。
「ああ。だから、お前らの力を、俺たちに貸して欲しい」
政宗は、隻眼で二人を見据えた。
二人もその視線を真っ直ぐに受け止める。
やがて、二人は政宗の差し出した手を取り、各々
「しゃーねぇな……」
「よろしくお願いします、伊達政宗様」
と言った。
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