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「やはりあの二人は、独眼竜についたか……」
玉座のようなところに腰掛けた男は、どこか楽しそうに言った。
彼の前にひざまずき、報告をしていた羅刹は、不思議に思った。
「……こうなることを、始めからわかっていたと?」
「まあ、な。こうでなくては面白くない」
男は杯をほし、くつくつと喉を震わせて笑う。
全身に悪寒が走るような、不気味な笑いだった。
「……これから、どうするつもりなのだ」
羅刹が問う。
「……俺はこのままここで待つ。早急に、我の器となりえるもの──神器、妖憑きを捕らえてみせろ」
「……わかった」
羅刹は頭を下げ、しずしずと下がっていった。
羅刹が出て行った後、男は再び杯に酒を注いだ。
透明な酒が、蝋燭の揺らめく焔の光を受けて輝く。
「ククッ……。我が野望の成就まで、もうすぐだ。俺がかつて望んだ日ノ本を作り出すことができる……」
思えば、随分遠回りをしてしまった。
あの邪魔さえなければ、自分の野望は叶っていたのに。
今思い出しても忌々しい。
「……それが戦国の理、か……」
窓から見える満月に、ふっと息をつく。
力無きものは力あるものに葬られる、弱肉強食の世界。それが戦国だ。
だから自分は何者にも劣らない力を求めた。
そして、ようやくそれにたどり着いたのだ。
「俺はやってみせる。このぬるま湯に浸りきった日ノ本を、必ずや変えてみせよう。ふふふ……ははははは!」
夜の闇の中に、男の冷たい哄笑が響き渡った。
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