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「………なんだ雨音も来てたのか………」
一階に降りると物音がしたのでカウンターを覗くと、雨音が調理のための包丁やらを整理しているようだった。
「おはようございます!!……マスター、今日は早いんですね?」
いつもと変わらない調子でやたらと声のトーンが高い………
「まあな…………それよりなんで朝からそんなに元気なのか、教えてほしいね………」
皮肉混じりの一言。
正直うらやましい節もある。
「もおマスターのこと考えるとテンション上がっちゃいました!!」
よくも恥ずかしげもなくそんなことを………
「グラス洗おっと……」
見事なまでなスルーをかました………
「もおマスター、照れなくていいですよ~」
ここもなにくわぬ顔で、グラスやシェイカーの手入れに精を出す………
「マスターってば~………」
「……………」
そんなくだりを何度か繰り返してから、チラッと雨音を見た。
マジで泣く寸前のようだ……
「…………雨音……」
まるで捨てられた子犬のような潤んだ目で、雨音は俺を見ていた………
「なんですか………」
なんとも弱々しい声だ………
そんなにショックだったんだろうか………
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