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冗談なんだから…………の部分がかなり弱々しいのは俺の気のせいではないだろう………
『真剣に自分を見てほしい』という意志が感じられた。
でも雨音はその気持ちを言葉には出さない………
いつもは軽い感じでいるが、本当の気持ちを表すことはほとんどない。
きっと言いたいことを我慢してしまっていると思う………
これでも雨音との付き合いは長い……
ある程度の仕草や声色の違いなどは、なんとなくわかる。
別に俺は四六時中こいつをおちょくってるわけではないし、そんな趣味があるわけでもないので、たまには真面目なことも言うべきだな………
「まあ………期待せずに待っとけよ。…………指輪」
俺自身も雨音をどう思っているかなんて、ずっと前から自分でも理解している。
ただ、隠して、想いを先延ばしにしてきただけだ。
俺には素直になる勇気がなかっただけなのだ。
もうそれも、潮時なのかもしれないな……
「えっ………それって……」
その声を聞いた時には俺は部屋を出ようとしていたので雨音には背を向けていた。
表情を見ることはできなかった。
……がおおよその予想はできる。
「俺はちょっと銀さんのとこ行ってくるから皿とかそのままでいいから……」
結局雨音の顔を見ることなく部屋を出た………
今更になって自分の言ったことの意味をはっきりと自覚した。
「やば……………恥ずかしい……」
そんな羞恥心はすでに後の祭りなのでとりあえず銀さんの部屋にむかう俺だった。
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