アタルとマリア

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「どっかに いい男いないかなあ」 なんか今日のマリアはたまらなく可愛いな。 普段強気なマリアが、絶対に言わないようなセリフだ。 「い 意外と近くにいるかもな」 俺のその言葉で、マリアは顔を上げる。 マリアの鼻と、俺の鼻がスレスレの所にあった。 酒臭いけど、薄暗い部屋の中で見る、マリアの目の輝きと唇の煌(きら)めき。 今日のマリアは、なんでこんなに可愛いんだ。 「早く働いてよ そしてあたしを迎えに来て」 俺は何も言わなかったが、マリアはそう言って俺に唇を重ねてきた。 なんだよこいつ、マジたまらねえこの妄想。 俺は1人部屋の中で、仰向けになったまま天井を見ていた。 今までのは全部 俺の妄想だ。 巨乳の歯科助手、幼馴染みのマリアなんていないんだ。 マリアは……真理愛は……。 22才の時……4年前に。 膵臓ガンで死んだんだ。 マリアは もうこの世にいない。  
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