セイヤ セイヤ

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「セイヤ!セイヤ!セイアッ!」 特徴的なこのコールが始まると、俺の出番。 先輩のホストがアイスペール(氷が入っている容器)に、焼酎とウーロン茶を入れて酒を作る。 俺は無理矢理作った笑顔で歯を見せ、それを口に近付け、アゴの下に乾いたおしぼりを当てる。 そして子供用のバケツみたいな量のウーロン割りを一気に飲み干す。 この時、気が付かないフリをしつつ、わざと口から漏らして酒をおしぼりに吸い込ませる。 こんな爆量の安酒、飲めるか。 「ウェイ!ごっそさまでーす!」 俺がそう言うと卓は盛り上がり、女がキャッキャッと笑う。 センスもクソも無い部屋着に、荒れた髪の毛は適当なチョンマゲ。 下手くそな上に安い化粧。 ホストに行くのとコンビニに行くのは、あたしにとっては一緒と言わんばがりの格好。 典型的な、遊び方の汚い小娘が。 シャンパンならまだしも、俺が飲み干したのはハウスボトルで作った酒。 売り上げになるのは、ウーロン茶の方ぐらいだ。 ホストを始めて半年。 俺はまだ、こんな犬みたいな真似をして稼いでいた。  
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