28424人が本棚に入れています
本棚に追加
プライベートで飲む量なら、とっくにくたばっている。
俺の意識が保っていられるのは、仕事に対する緊張感のお陰だ。
またアイスペールに注がれた水割りを掴み、おしぼりを当てた口に近付ける。
気持ちが悪いのと同時に、胃がパンパンで、もう入らないんだ。
今にもさっき飲んだ分が鼻から吹き出しそうだ。
それでも、飲まなきゃ。
「セイヤ!セイヤ!セイアッ!」
その卓の女と、本指名のホストは、他人事のようにコールと手拍子を繰り返す。
俺より不細工で、口だけ野郎のクソホスト!
泣きながら中学の時のイジメられた経験を、え?このタイミングで?話すワキガ女!
ちくしょう、会話が続かないお前達の為に、俺は無様に飲まなきゃいけないんだ!
覚えとけ!覚えとけよ!
いつか俺がNo.1になったら鼻から酒を飲ませてやる!
俺が冷たいウーロン割りの鼻水を出しながら、覚悟を決めた瞬間
「ぶへへーい!」
おかしな掛け声と共に、誰かが俺の持っていた容器を奪った。
「シンノスケ」
そいつは俺とほぼ同時期に働き始めた、シンノスケという男だった。
最初のコメントを投稿しよう!