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違う卓にいたはずのシンノスケが、俺の酒を奪ったんだ。
「いたーきやーす!」
シンノスケはそう言って、喉を鳴らし、ゴクゴクと容器の酒を飲み干す。
俺はポカンとしていたが、本指名と女は、直後にシンノスケに向かって手拍子と歓声を始めた。
盛り上がれば、誰でもいいんだ。
「ごっざまでしたー!」
シンノスケはそう言いながら、容器を高く掲げた。
なんて速さだ。
そして直後に、彼は口元に容器を戻す。
ブシャー!
口と鼻から、飲んだ物を噴水みたいにリバースした。
「やっ!」
「うわ!きったね!」
卓のホストと女が叫ぶ。
俺はすぐにシンノスケの口元に、自分の為に用意したかわしぼを当てる。
立ったまま吐きながらも、アイスペールにそのまま戻した奴は初めて見たよ。
おかげで、周りに迷惑はかけなかった。
「ちょっと連れて行きますね」
俺はそう言って、フラフラしている彼を抱えて席を立った。
「俺を助けたつもりか?」
小声でシンノスケに聞く。
「ハハ」
シンノスケはただ笑顔でヘラヘラしていた。
あまり話したことは無いが、こいつ。
いい奴なのか。
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