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14歳の頃、父が知り合いから子犬を貰ってきてくれた。
「なにこの犬?何犬(けん)?」
父が抱いていた産まれたばかりの子犬は、クルンとしたナッツみたいだった。
当時のあたしは反抗期真っ盛りで、両親は随分手を焼いていた。
警察沙汰は無かったが、頻繁に母が中学校に出向いては頭を下げていたんだ。
別にヤンキーとかじゃない。
どんな学校にもよくいる、突然泣き出したり、感情の起伏が激しい痛い子だったんだ。
自分の陰口を言ったと疑ってはその子を叩いたり、髪を引っ張ったり、時にはハサミで切ったりもした。
どういう発想かは知ったこっちゃないが、そんなあたしの精神にいい作用があればと、父は子犬を飼うことにしたらしい。
子犬は紀州犬が混じった雑種だった。
「ほら 可愛いだろう オスだよ 名前はエイアが決めていいよ」
あたしは不慣れな手で、父から子犬を受け取った。
成長して立ち上がれば全長1.5Mほどになる犬だが、その時の子犬は子ウサギほど小さく、そして熱いほど暖かかった。
「ズシオウ」
「え?」
「名前 ズシオウマルがいい」
子犬はあたしの手の中で、モゾリと動いた。
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