エイアとズシオウマル

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あたしの好きな物語に『安寿と厨子王丸』というものがある。 1964年に制作されたアニメ童話だ。 実はあたし自身、その映画を見た事はない。 けど、あたしはネットで知ったその物語に強く惹かれていた。 物語の内容は、安寿(アンジュ)と厨子王丸(ズシオウマル)という仲のいい姉弟の話だ。 2人の母は人買いにさらわれ、佐渡島へ。 姉弟はとある金持ちの家で過酷な労働を強いられる。 ひどい虐待の中、姉の安寿はついに弟の厨子王を逃がすが、直後に拷問死。 安寿の魂は白鳥となり、厨子王を導く。 最後は成長した厨子王が佐渡島に渡り、盲目になった母と再会。 厨子王は母と共に白鳥になった姉を見守って終わる。 気持ちのいい話では無いけど、この物語は引き裂かれた姉と弟の悲運を通し、日本中世の様々な"語り"を表しているそうだ。 14歳のあたしには物語のテーゼは理解しきれていなかったが、あらすじに強く惹かれていた。 あたしの名前はエイアだけど、あたしはこの子の姉のアンジュ、この子犬はズシオウマル。 別に大きな理由は無い。好きな物語の登場人物を、自分と飼い犬に重ね合わせてみただけだった。  
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