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ズシが来てから数ヶ月経ったある日。
「エイア エイア」
家に帰ると興奮した様子の父があたしを迎えた。
ちなみに父は建築士で、家で作業する日も多かった。
「どうしたの」
「あれ?お前なんでジャージなんだ?」
あたしは制服が入ったバッグを握る。
「学校で制服汚しちゃって」
父は「そうか」とだけ言って続ける。
わりと天然なんだよな。
「ズシは天才犬かもしれないぞ」
ズシが天才?何を言っているんだとは思った。
「お昼に家に入れて 一緒にテレビを見ていんだ そしたらリモコンが手元に無かったんだ」
よくは分からないけど。
「それで?」
「冗談で『リモコン』と言ったらリモコンを持って来たんだよ!」
「へえ」
なんだ。その程度、テレビでよく見るじゃん。
けれど父は相変わらず興奮していた。
「いや すごいよズシは!訓練もしてないし まだ幼いのに!」
興奮する父を尻目に、あたしは自分の部屋に戻った。
その頃は学校の人間に対してもうんざりして、家に帰っても何もしない時間が続いていた。
ズシと遊ぶ時間も、めっきり減った。
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