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いつもとは雰囲気の違う店で、父と二人。
こうやって二人並んで食事をするのは何ヶ月ぶりだろうか。
「緊張するか?」
「ん、ちょっとね」
「そうか」
俺なんかよりも父の方が緊張していそうだ。
これから俺たちが会おうとしているのは父の再婚相手とその連れ子だ。
「なんで父さんの方が緊張してるんだよ?」
「いや、幾分女性と食事をするのは未だに慣れなくてな」
女性と食事って、俺や連れ子もいるんだろうと思っていると父が突然席を立つ。
どうやら再婚相手が来たようだ。
「佐伯くん!こっちだ」
父の目線を辿り、佐伯と呼ばれた女性を見る。
「……綺麗」
俺が佐伯さんをみた第一印象はそれだ。
「ごめんなさい。お待たせしちゃって」
「いや、いいんだよ。これが私の息子の健人です」
「あ、高遠健人(たかとうけんと)です。よろしくお願いします」
父と同じように立ち上がり、佐伯さんに挨拶をする。
「佐伯まどかです。よろしくお願いします。で、こっちが……」
佐伯さんの後ろから顔だけをこちらに出して、まんまるな目で俺と父さんを見つめてる小さな男の子がいた。
「真洸。ちゃんと出てきてご挨拶しなさい」
ゆっくりと母親の後ろから横に出てくる男の子。
そして、俺と父に見つめられながら元気な声で叫ぶ。
「まひろ。3さいです。よろちくおねがいちます」
これが俺と弟との出会いだ。
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