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「彼女なんてめっそうもない!父さんは母さん一筋だ」
「だって付き合ってる人がいて、その人と結婚するんだろ?」
「いや、付き合ってはいない」
「付き合ってないのに結婚するのか?」
「そうだ」
「なんだそれ?付き合ってもないのにいきなり結婚っておかしいだろ?あ、もしかしてずっと言い寄られてて弱みでも握られたとか?」
「彼女はそんな人ではない!結婚を申し込んだのも私からだ」
どうも父が言っていることが理解できない。
ようするに話をまとめると、再婚相手とは付き合っていないけど、結婚をすることになった。
しかも言い出したのは父のほうから。
「すまん、意味が分からないよな」
頭をかきながら悩んでいる俺に向かって父が苦笑いをしていた。
「ほんと、よくわからないんだけど。もう少し詳しく話してよ。俺は別に父さんの結婚には反対しないし。むしろ嬉しいよ。」
だって今まで俺の為に自分を犠牲にしてきた父の再婚を喜ばない息子はいないと思う。
「ありがとう」と言って一度ソファーに座り直し、父はある決意を俺に話す。
「再婚相手は佐伯まどかさんといって、父さんの部下だ。彼女はシングルマザーで今年3歳になる息子がいるんだ」
そこでいったん父は息を吸い込み、言いづらそうに息をはき、ゆっくりと言葉を続けた。
「彼女はあと半年の命なんだ」
「え?」
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