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「私はそれを承知で、むしろそのことがあったから彼女との結婚を決意したんだ。彼女が大切にしている息子を私は守ってあげたいと思った」
少しの間、父の言ったことが理解できず、次に言葉を発したのは父が話をした数分後のことだった。
「半年の命のやつと結婚するってことかよ?」
「ああ、そうだ」
死ぬと分かっている人と結婚しますって言われて「分かりました」とすぐに納得出来る訳がない。ましてや祝福なんてもっと出来る訳がない。
「なんだよ?!突然再婚とか言い出したかと思ったら、父さんが幸せになる為の結婚じゃないの?」
冷静さを失い、いつもはどちらかというと大人しいのに、俺らしくもなく父に向かって声を荒げる。
「私のことはどうでもいいんだ。ただ、彼女の息子が」
「なんだよ彼女の息子って?!もしかして父さんの隠し子?」
「そんな!私の息子だなんてとんでもない」
俺はソファーから立ち上がり、父に背を向けた。
「ごめん、さっき反対しないっていったけど撤回するわ。
男手一つで育ててくれた父さんに感謝もしてるし、尊敬もしてる。だけど、自分のことどうでもいいというやつは嫌いだ。
俺は父さんが幸せになれない結婚は認められない」
「健人!」
そのまま振り返ることなく俺は部屋へ戻っていき、ベッドに横たわる。
突然父からの告白。
べつに俺たちは特に仲の良い親子では無かったかもしれない。
だけど、俺は今まで何不自由なく育ててもらい、やっと俺がこれから父さんを楽にしていってやれると思った矢先の再婚話。
だけど、相手が半年の命だなんて……。
せっかく、父さんの幸せが見えたのに、なんでそんな人と結婚をするなんて言ってんだよ?
いきなりのことで訳が分からず、考えることも嫌になってそのまま眠りに落ちた。
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